東京の一流シェフ、家庭料理のプロが出会った
長崎県・島原半島の生産者と地域の食文化

szechwan restaurant 陳(スーツァンレストラン チン)

大久保 武志

szechwan restaurant 陳(スーツァンレストラン チン)

2024.2.26

島原半島・産地視察

2022年12月9日~11日、東京都渋谷区にある中国料理レストラン「スーツァンレストラン陳」の料理長、井上和豊氏と、井上氏と友人でもありNHKの料理番組「きょうの料理」のプロデューサー・矢内真由美氏が産地視察のため3日間長崎県を訪れました。

井上料理長はこれまでも積極的に長崎県の食材を使い、様々な中国料理にアレンジして提供されています。

今回はこれまでも長崎県食材勉強会や長崎UMAを通して交流を築いた雲仙福田屋の料理長・草野玲氏のいる雲仙市をはじめ、一億人のいぶくろとも呼ばれる島原半島の南島原市、島原市を訪れ、現地の生産者や食文化に触れて頂きました。

その産地視察、一日目の様子をお伝えします。

雲仙福田屋 香ふく

午前中、東京から長崎空港へ到着した井上料理長と矢内プロデューサーは、長崎県の職員とともにまずは雲仙温泉街へ。

草野料理長が腕を振るう雲仙福田屋のレストラン・香ふくにて、雲仙てんぷらのランチを。

草野料理長が手塩にかけた福田屋ファームの無農薬野菜を始め、雲仙の種とり農家として知られる岩崎さんや竹田かたつむり農園の野菜や玄米餅など、雲仙の野菜を中心とした長崎県産のこだわりの食材を使った地産地消の極上てんぷらコース。

食材をひとつひとつ、丁寧に説明してくださる草野料理長に「どこでこんな食材を!」と感動するお二人。油や塩、お茶にまで長崎県産の選りすぐりをそろえ、素材のおいしさや個性を存分に味わいました。

漬物命という井上料理長は草野料理長が直々にぬかで漬けたお漬物にもご満悦の様子で、話も弾みました。

福田屋ファーム

食事を終えた後は山を下り南島原へ。

道中、先ほど香ふくのてんぷらの食材にも出てきた野菜を育てている福田屋ファームに立ち寄りました。

福田屋ファームは、草野料理長が自ら無農薬で伝統野菜などを育てており、趣味と仕事への情熱を体現した場所。畑を周りながらマイクロトマトなどの野菜を採ってそのまま食べ、自家菜園の楽しさを味わいました。畑の清々しい環境に矢内プロデューサーは自分も畑をやりたいとの言葉も。

島原そだち製麺所

車を走らせ、南島原市西有家(にしありえ)で郷土島原の名産品である「手延べそうめん」などを生産する「島原そだち製麺所」へ。家族3人でこの製麺所を営んでおり、息子さんの伊崎洋二さんの案内のもと工場を見学しました。

この日は作り始めて1年ほどという全粒麺が部屋一面に並べられ乾燥されている姿が。部屋いっぱいに広がる香りに包まれ、クリーム色ののれんのように整列された麺の美しい光景に一同見入ってしまいました。

組合に入らず、自社ブランドの「島原そだち」を手がけ、天候や温度など自然のしくみを感じながら手間暇をかけて作られた少量生産の麺。その麺作りに対する姿勢と哲学に感銘を受けたようです。

その後、ご自宅に通され、自家製のかりん茶を頂きながら、お母さまも交えて手仕事などの話に花が咲き、和やかな雰囲気でその場を後にしました。

みそ五郎の蔵 喜代屋

続いては島原そだち製麺所から車で5分ほどの住宅地の細い道を通ってたどり着いたみそ五郎の蔵 喜代屋。こちらは大正7年から味噌、醤油、もろみなどを作り続け発酵文化の伝統技術を守る老舗。井上料理長はレストラン陳で東京の日本橋長崎館でこちらの納豆みそに出会い、醤(じゃん)を作って焼き魚に合わせたこともあるとのこと。生産者である林田社長と初対面を果たしました。

定番商品とともに、みんなに楽しんでもらいたいと新商品のチョコ味噌を紹介。「発酵エンターテイメント」として新しいことにも挑戦していくという林田社長に、井上料理長と矢内プロデューサーは「素晴らしい!」と今後の展開にも期待している様子でした。

団らんの後、工場長の息子さんの案内で工場見学に。

味噌作りの工程を説明してもらいながら現場を見せてもらい、目の前の大きなバケツや重石に使われていた岩などに興味津々。様々なタレが売られるようになり、醤油の需要が減っているとの話に、家庭料理や郷土料理で作り方を教える矢内プロデューサーは自分ごとのように危機感を感じられたようでした。

はねぎ搾りの酒蔵 吉田屋

この日の最後は同じく南島原市の有家町にあるはねぎ搾りの酒蔵 吉田屋へ。醸造所を見学させて頂きました。

全国でも5~6軒しかやっていないという伝統製法のはねぎ搾りでお酒を製造しており、その製法を写真とともに実際の「はねぎ」と呼ばれる巨木を使ってどのようにお酒を搾るのかを実演。初めてみるはねぎの大きさとかかる手間暇に驚いていました。

効率化・機械化の波に飲まれ忘れ去られていたはねぎ搾りの製法を復活させた現在の蔵元 吉田嘉明氏の並々ならぬ努力と思いに触れたお二人。それに加え、8~9種の花酵母で醸すというこだわり。

醸造所の見学の後はお店の方へ移動し、先ほどの製法で作られた数種類のお酒を実際に試飲してその味と違いを感じました。

視察一日目を終えたその日は島原のホテルに宿泊。

二日目は種どり野菜農家の「竹田かたつむり農園」や対馬地鶏を育てる「登利亭」、オーガニック直売所の「タネト」、漁業と水産物の商品を開発・販売する「天洋丸」など、雲仙市の生産者さんや事業者さんを訪れ、さらに地域の食に触れ理解を深めていきました。

 

取材日:2022/12/9 ライター:Miyako #ナガサキタビブ

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