ながさき黄金を作る原動力は「美味しい」という気持ち。
そして諦めない強さだった。

馬場 千春

大久保 武志

馬場 千春

2024.2.19

鮮やかな黄色い果肉。食べると栗のような甘さが口に広がる。煮崩れもしにくいためいろいろな料理に合わせやすい。そんな強みの多いながさき黄金を「金の宝」と表現する栽培農家・馬場千春さんにお話を伺った。

『継続は力なり』代々作り続けてきたじゃがいも農家の胆力

うちは、もともと実家が農家だったんです。四姉妹の長女だったのもあり、跡取りのような形で農家を継ぎました。もう何代前からかなんてわからないくらい先祖代々ずっと農家ですよ。畑もいったい何箇所あるんだろう…だいぶん、だいぶん多いです。笑 生産しているのは、米・じゃがいも・人参・生姜ですね。諫早や飯盛は、全体的にうちのような代々続く農家が多いんです。だから、育ちが悪い年やあまり儲けが出ない年など多少難しいことがあっても、頑張って作り続ける力がありますね。それに、土壌改良や肥料の与え方など、これまで受け継がれてきた経験がものを言う場面も多いんですよ。継続は力なりって言いますけど、ほんとうそういう精神です。

鮮やかな黄色と甘い食味。原点は自身が感じた感動

うちで作っているじゃがいもは、メークイーン・ニシユタカ・アイユタカ、それに2017年からながさき黄金を作付けするようになりました。ながさき黄金の印象は、まずは皮を剥いた時の黄色味ですね。ほかのじゃがいもと違ってすごくきれいなんです。そして、蒸したり加熱したりしても色が変わらないんです。鮮やかな黄色味のままで、ながさき黄金という名だけあります。つぎに食べてみたら、食味がすごく甘かったんですよね。ながさき黄金は「栗のような甘み」という謳い文句があるんですけど、ほんとうに栗のような甘さがほんわりとしたんです。わたし自身「食べて美味しかったから」というのが作付けをはじめた理由なんです。

 

橘湾から吹くあたたかい潮風がじゃがいもの成長につながる

たくさんある畑の中でもみなさん気に入られる場所があるんです。それが橘湾を見下ろすところにある段々畑で、見晴らしがよく、雲仙普賢岳や天草まで見えるんです。そこは、海沿いにあるので潮風のおかげであたたかい空気が流れるんです。だから、じゃがいもが遅霜にやられることもなく、よく成長して収穫が早いんですよ。早いものだと4月の中旬から収穫が始まるじゃがいももあります。もちろん工夫しながら育てているのもありますが、あたたかい潮風はやはり飯盛の地形のおかげですね。

ながさき黄金ならではの味。品種による違いを届けたい

じゃがいも農家として、消費者の方にもじゃがいもの品種による違いを知ってほしいな、と思います。それぞれ品種によって味の違いがあって、特にながさき黄金は他と違う特別な味がするんです。ながさき黄金は主に直売所に卸しているんですが、そこの方が品種の違いをパネルにしてくれてるんです。「この品種はこの料理に合ってる」とか味の特徴とかをまとめてくれてるんですね。それを見て「あ、違うんだ!」って気づいて、そして食べて「あ、美味しい!」っていうのを感じてもらえたら嬉しいですね。それで「また今度買ってみよう」とか「知り合いに送ろう」とかなったら一番いいですね。

ながさき黄金は「金の宝」広く市場へと願う

ながさき黄金って他のじゃがいもと違って難しい部分が多いんです。収量が少なかったり、種芋が手に入りにくかったり、なかなか大きく育たなかったり、と。それに、肥料のくい込み方も他と全く違って特殊なんです。そんな大変さもありますが、手のかかる子ほどじゃないですけど、わたしにとっては「ながさき黄金」は名前の通り「金の宝」のようです。せっかく新しくできた長崎の品種だからこそ、みんなが一丸となってブランド化して、販路もどんどん広がっていってほしいですね。もちろんそのためにも、期待を超えるいいじゃがいも、いいながさき黄金を作らないとって思います。コツコツと、コツコツと頑張りますよ。

取材日:2023/3/13 ライター: カマサキ #ナガサキタビブ

馬場農園

馬場農園

長崎県諫早市飯盛町

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