国産素材・無添加・手造りに
こだわった伝統のみそ造り
素朴なふるさとの味を守り続ける
農事組合法人 吾妻農産加工組合
代表
松本 真美
2024.2.12
食卓に欠かせない「これでなきゃ」の品ばかり
昭和56年に農協婦人部から立ち上げた加工組合です。当時は大豆が豊富にとれていて「これをどうにか商品にしたい」ということで、みそ造りをすることになりました。吾妻地区といえば麦みそ。まずは各家庭の仕込みみそを分けてもらったそうです。それから甘くて優しい味わいの米みそ、崎戸のいそしおにこだわったまろやかな減塩みそ(麦)。あのころすでに減塩に着目していたのは先進的だったと思いますね。発足以来のこの3種に、20年ほど前に合わせみそが仲間入りして、今は4種のみそを造っています。どれも同じくらい人気で、北海道から沖縄まで発送していますよ。ほかに、納豆みそやおかずみそ、梅干し、新鮮な地元産イチゴを丁寧に煮詰めたイチゴジャムなど、熱心に求めてくださるファンもいてありがたいことです。
麹がうまく発酵するために温度調整を徹底
造り方は昔から全然変わっていません。大豆は残念ながら地元での生産がなくなりましたが、厳選した国産・長崎県産の素材と、無添加・手造りにこだわっています。工程で一番重要なのは温度管理。麹菌の発酵の具合で甘さが変わってくるのです。ちょっと暖かくなったなと思えばヒーターを切ったり、寒いと重しをしたりして調整します。「今日、寒かけん大丈夫かなあ」と、常にその日の気温を気にするのが私たちの口ぐせになっていますよ。みその仕込みには必ず3日連続の日程が必要で、今日は2日目。30℃に保たれた麹室(むろ)では、もろぶたの麹をひとつひとつ手で混ぜています。1時間半から2時間くらいかかるので、みんな半袖の作業ですね。その日の温度管理は全て記録ノートにつけます。これが本当に大事。私もここに来たらシャキッと元気になりますよ。みそ造りが元気の薬になっているんです。
伝統を守る。無添加・手造り・国産素材にこだわる
おもてなしを大切にする雲仙温泉街の一流の宿にも、ありがたいことに吾妻みそを納めさせていただいています。そこで言われることは「伝統を絶やさないで」ということ。近年は人口減少と食事スタイルの変化もあって、みその需要は減り続けています。そんな中、現状を維持していくのも大変ですが、国産素材、無添加、手造りには何としてもこだわっていきたい。そこは伝統の守り手としての重大な責任と誇りを感じています。最近、フリーズドライのみそ汁の素を商品化しました。カップに入れて熱いお湯を注ぐだけ。お弁当のお供にも最適です。若い人にも手軽に吾妻みそのみそ汁を楽しんでほしいですね。
麦(米)と麹が生み出す優しい甘みに、ほっと懐かしさを感じる田舎みそ。長崎人のDNAに染み込んで「これでなくては」と思わせる伝統の味わいです。その製造工程は、昭和56年の組合発足時から全く変わらず、赤子を育てるような慈しみでひとつひとつ手造りされるものでした。
取材日:2023/3/16 ライター: 龍山久美子