大きくて、甘くて、おいしいいちごを届けたい。
この土地の経験とエネルギーを、一粒に込めて。
JA島原雲仙 なんこういちご部会 部会長
栗原 将史
2026.3.10
寒さを甘さに変える、国見町の春の魔法

雲仙岳の裾野に広がる雲仙市国見町。全国トップクラスのいちごの産地である長崎県内でも、特に栽培が盛んに行われている町です。
きっかけは、50年以上前。火山活動によってもたらされた、ミネラル豊富で水はけのよい土壌を利用し、いちごのハウス栽培が始まったことです。その後、高設栽培(※)が導入され、現在では240戸の農家が、県内出荷量の1/3を占めるいちごを生産しています。その土台となるのは、冬でも寒くなりにくい気候。有明海に向かって扇状に広がるなだらかな斜面は、放射冷却の影響を受けにくく、いちご栽培にピッタリだと言われています。
※地面から1メートルほどの高さに苗を植える栽培方法
徹底した温度管理から、生まれる甘み

この地で、代々いちごを育てる栗原将史(まさふみ)さんのハウスにおじゃましました。22歳で農家になり、この道、25年以上。祖父と父から継いだ20アールの畑で栽培を続けています。
真冬にも関わらず、ハウスの中は、春の陽気です。「いちごは暖かくならないと実をつけないので。ハウスの中で、今は春なんだと勘違いさせるんです」。

栗原さんのハウスがあるのは、町内でも標高が高いエリア。海沿いのハウスに比べると、冬の冷え込みは厳しく、温度を保つための燃料費もかさみます。しかし、その寒さこそが、栗原さんのいちごのおいしさの秘訣です。おいしいいちごを育てるためには、徹底した温度管理が欠かせないと話す栗原さん。苗の時期や、定植してから開花するまでの間に、しっかりと冬の寒さを経験させることで、養分やエネルギーをぎゅっと蓄えた力強い土台ができるのだそう。その寒さがあってこそ、ハウスの中の一足早い春が効いてくるのです。「寒いと収穫も遅れますし、収量も減ってしまいますが、その分、甘みの強い実になります」と栗原さん。
ただよう春の香りと、真っ赤に色づいた大粒の実

ちょうど、ハウス内では収穫の真っ最中でした。奥さまのしのぶさんが、実全体が赤く色づいたいちごを、手際よく摘んでいます。チェックするのは、ヘタの向き。しっかり上に反っていれば、収穫の合図だと言います。
現在育てているのは、「恋みのり」と「ゆめのか」という2つの品種です。長崎県の主力品種である「ゆめのか」は、酸味と甘みのバランスがよく、収量も多い優等生。しかし、病気に弱く、繊細な管理が求められるのだと言います。一方で、「恋みのり」は、大粒で、果肉にほどよい歯応えがある品種。果汁が豊富で、酸味が少ないため、子どもにも人気が高いのだとか。

ビッグサイズの恋みのりを、「食べてみませんか」としのぶさんが差し出してくれました。食べた瞬間、あふれ出す果汁と、濃厚な甘み。栗原さんの試行錯誤と、この地で代々受け継がれてきた技術のおかげで、この甘い実がなるのです。
経験と技術に裏打ちされた味が、全国へ

今シーズンは、秋口の猛暑により植え付けが5〜7日ほどずれ込み、自然を相手にする難しさを痛感したと話す栗原さん。「植え付けが1日遅れれば、収穫が3日遅れる」とも言われるそうですが、適切な水と温度の管理、適した品種の選定により、10日ほどの収穫の遅れにとどめることができたと言います。

収穫を迎えたいちごは、その日のうちに手作業でパック詰めされ、国見町にあるなんこう集出荷施設」に運び込まれます。翌日には、県内と、関東・関西・中国地方の市場に出荷。そこから、全国のスーパーや飲食店に届けられます。

「できるだけ、大きくて、甘くて、おいしいいちごを食べてもらいたい」と話す栗原さん。その経験と技術に裏打ちされた味が、全国へと、一足早い春を届けてくれます。
いちごをおいしく食べる方法

①ヘタを取ります。
②ヘタの下にある固い芯の部分を取ります。
③ヘタ側から、一口でいただきます。
栗原さんのオススメの食べ方
「頭(先)からかじって食べる人が多いのですが、それだと果汁も出やすく、甘みのバランスも悪く感じるので、できればお尻(ヘタ側)から一口で食べてください」
いちごの保存の仕方

本当はすぐに食べてほしいいちご。どうしてもすぐに食べられないときは、
①濡らしたキッチンペーパーを敷きます。
②ヘタを下にし、並べます。
栗原さんのワンポイント・アドバイス
「いちごは水に濡れると、そこから傷んでしまうので、食べる直前に洗うようにしてください」
もぐもぐながさき