命がけで獲った伊勢海老を、全身全霊で調理する。
思いと命を、まるごといただきます。

おくうら 代表

竹村 真一

大久保 武志

竹村 真一

おくうら 代表

2026.1.14

海の宝を、まるごと。崎戸で味わう、伊勢海老の贅沢

長崎県内でも有数の伊勢海老の好漁場として知られる五島灘。獲れた伊勢海老は、西海市崎戸町で水揚げされます。本土から、大島大橋と崎戸橋を渡り、辿り着く小さな島が崎戸町(蠣浦島)です。のどかな田舎の漁港を通り、細い路地の先にある「おくうら」を訪ねました。お目当ては、立派な伊勢海老を丸々一匹使った「まるごと伊勢海老定食」。例年8月から翌年5月までの期間限定です。

静かな港町で見つけた、海底の宝

刺身とみそ汁の両方が楽しめる贅沢な定食には、宝石のようなつやめきと、漁師町ならではの豪快さが凝縮されています。透きとおった伊勢海老の刺身に軽く醤油をつけ、口の中へ運ぶと、プリプリとした食感に続き、とろけるような甘みが広がります。

そこへ、濃厚なエビみそが溶けだしたみそ汁を。海の香りが鼻を抜け、港の潮風を感じるようです。「通は、足の身が好きなんですよ」と、ニッコリ顔で話すのは店主・竹村真一さん。しっとりとした身が、足の先までぎっしりと詰まっています。殻を割るたびに現れる白い身を探し、無心の時間が過ぎていきます。

島の海が育んだ、驚きの大物

この味に出会う少し前、漁港につながれたイカダに竹村さんとお邪魔しました。「おくうら」の定食に使用する伊勢海老は、調理の直前まで、ここで生かされています。イカダの持ち主は、町内の伊勢海老漁師・山内勝成さんです。崎戸町で水揚げされる伊勢海老の、ほかと最も違う点は、その大きさ。

カゴの中の1キロ超えの大物に驚いていると、山内さんが「まだ大きかともおるぞ」と笑います。2キロを超える大物が上がることもあるのだそうです。「(伊勢海老も)それだけ長生きして、おいしいもんば食べてきとるけん、そりゃ身もおいしいわけ」と竹村さん。

漁師と料理人。海がつなぐ信頼の味

伊勢海老は、「刺し網」と呼ばれる漁法で獲ります。8月の漁の解禁を待ち、長さ1,000メートルにもなる網を、深さ20メートルから60メートルの漁場へ下ろしていきます。どのあたりに網をおろすかは、漁師の腕と目次第。五島灘の海底は地形が複雑で、潮の流れも速いため、漁が難しいとされますが、「それがおもしろかとよ」と笑う山内さん。

伊勢海老を獲って、もうどれぐらいですか?と尋ねると、「30〜40年かなぁ」と山内さんから返ってきました。その隣で、「いつまで獲るとって聞いたら、死ぬまで!って言うとよ」と竹村さん。「おくうら」が開店して以来続く2人の絆が、あの味を支えているのです。(※写真左が「おくうら」店主の竹村さん、右が伊勢海老漁師の山内さん)

命を懸ける仕事、受け継ぐ想い

定食に使用するのは、山内さんの獲った伊勢海老のうち、550〜600gのもの。一般的に大物として流通するサイズです。食べ応えと濃厚な味のバランスがよい伊勢海老をつかんだ竹村さんが、調理場へ向かいます。イカダから水揚げされたばかりの伊勢海老が、シンクで大きく跳ねました。出刃包丁に力を込め、伊勢海老を半分に割り、片方はみそ汁用として鍋へ。もう片方の身は、器用に殻から外していきます。

慣れた手つきに、真剣な目。「勝にぃ(山内さん)が命かけて獲ってくれるけん、命かけて(料理を)作ろうって思う」と竹村さんがこぼしました。

地のものを地で味わう。この町の贅沢

刺し盛には、伊勢海老のほか、旬の地魚も。この日はハマチ、タイ、シマアジの三種が並びます。「刺身は海の波みたいに、レモンは水平線を飛ぶカモメね」と竹村さん。鍋の中の伊勢海老も赤く色づき、一際輝いて見えます。

「地のものを、地で楽しんでもらう」。それがおくうらのポリシーです。地元食材のおいしさをストレートに届け、訪れる人を笑顔にしたいという思いが、言葉だけでなく料理そのものからも伝わってきます。山内さんが命をかけて獲った伊勢海老を、誠心誠意調理する竹村さん。港町の豊かさと人々の想いがまるごと詰まった定食のできあがりです。

おくうら

おくうら

西海市崎戸町蠣浦郷1948-1 TEL:0959-35-3975

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