お味噌と甘酒の芳醇な香りと
味がぎゅっと詰まった
どこにもない長崎カクテルが誕生。
ラボラトリオ ディ アージョ
Laboratorio di Agio
2023.12.25
吾妻味噌と百年甘酒の食べるカクテル
これまでもさまざまな食材を使ってカクテルを作ってきた久米さん。今回チャレンジしたのは味噌と甘酒を使った食べるカクテルです。食材の個性を活かした、まったく新しい長崎カクテルが誕生しました。
お客さんから刺激を受けカクテル作りを楽しむ研究室
18歳からカクテルを作り続けてきました。福岡で修行したあと2014年 にラボラトリオ ディ アージョをオープンしました。店名に「ラボ」とあるように、実験するように、様々な食材を使い創作カクテルを作っています。お客さんは料理人の方も多く、県外出身の方もよく来られますね。そういったお客さんとの交流からカクテルのインスピレーションを頂いたり、食材との出会いをもらったりしています。最近は新たなカクテルの可能性を拡げたいと思い、地元の生産者さんと会って食材探しも楽しんでいます。この仕事で出会った人たちのおかげで、長崎の良さを知ることができています。わざわざ遠くに行かなくても、長崎には素晴らしい食べ物がたくさんあると感じています。
長崎の濃い味を活かした今までにないカクテルを作りたい
今回勉強会に参加して「自分は料理人じゃないけど、何ができるだろうか」と考えました。野菜もありましたが、今回選んだ素材は島原の「吾妻味噌」と南島原の吉田屋さんの「百年甘酒」です。“やったことないものをやってみよう”と。試食したとき感じたのは「味が濃い」ということですね。味噌だけでなく、長崎県の食材は野菜にしろ、果物にしろ、味が濃いのが特徴だと思っています。通常のカクテルの作り方だと、全体のバランスを見て材料を足したり引いたりして調整します。けれど今回は濃い味をあえて引き出して、個性あふれるカクテルにした方がよいと思いました。その方が素材の良さを表現できるのではと考えたからです。
食べるカクテル
今回作ったのは「食べるカクテル」です。正直、今までのカクテル作りの中で一番悩みましたね(笑)。味噌はそのまま使うと塩気が強くなるため、クリームチーズの味噌漬を使いました。それに甘酒、島原産のバナナ、奈良漬ウォッカなどを配合しました。全てをミキサーで混ぜた後に、液体窒素で一気に冷やし固めます。ジェラート状になったカクテルにビターチョコをまぶしたら出来上がりです。溶けてしまう前にスプーンですくって、もなかに入れて食べます。液体窒素で急速に冷やすので水分と固形部分が分離せず、なめらかで味もぼやけない効果があります。それ以上に大量のスモークが出るのでエンターテイメント効果も抜群ですね。ぜひ注文して動画に撮っていただきたいですね。
単純に驚いてもらえたら嬉しい
私は料理人ではないので、料理を作ることはできません。けれどいい食材は料理だけでなくカクテルとしても十分ポテンシャルがあると思います。アルコールが入ると、どうしてもかどが出てしまうという弱点があります。でも、あえてアルコールと食材をあわせることで「こんな食べ方、飲み方があるんだ」と食材の新たな魅力を知ってもらうことができるのではと思っています。
食べていただければわかると思いますが、それぞれの素材の味と香りが時間差で口の中に広がります。アルコール度数は低めですが、麹や奈良漬の香りでほろよい気分にさせてくれるでしょう。いろいろ言いましたが「え!これ長崎のお味噌なんだ」「甘酒が入ってるんだ!」と単純に驚いてくれたら嬉しいですね。カクテルをきっかけに県産食材の良さを知る人がもっと増えればと思っています。
取材日:2023/3/15 ライター: 出口やえの