どう調理したっておいしい!
そんな食材であふれた島へ、遊びに来てください。

壱州茶屋 with ritomaru
店長

岩永 勝

大久保 武志

岩永 勝

壱州茶屋 with ritomaru
店長

2026.3.27

壱岐の「おいしい」の掛け算が、完結するテーブル

弥生時代から農耕や畜産の歴史を持つ壱岐。高い山がなく平坦な島が耕作に適しているだけでなく、牛や鶏を育てる農業も、古来よりこの島のスタンダードでした。また、古くから大陸との交易の拠点として外からの客人が訪れていた歴史を持つため、「島の中にある素材だけで最高のごちそうを作り、人々をもてなす」という営みが連綿と行われてきた島でもあります。

そんな地産地消の島・壱岐のおもてなしの心を、現代でも体現する一軒の店を訪ねました。

島の食材で作る、この島ならではの鍋料理

郷ノ浦港からほど近い「壱州(いしゅう)茶屋 with ritomaru」です。引き戸を開けると、「こんにちは」という声が。迎えてくれたのは店長の岩永 勝さんです。あえて「いらっしゃいませ」と言わないことで、肩肘張らず、親戚や友人を迎える感覚でお招きしたいとの思いがこめられているのだそうです。

店が掲げるのは、壱岐でとれた食材を使用すること。長崎県の「ながさき地産地消 こだわりの店」にも選ばれています。単なる飲食店としてではなく、壱岐観光の入口としての責任感がにじんでいます。

この店の一番人気は、壱岐の郷土料理である「ひきとおし」。壱岐の人々が、自宅で飼っていた鶏をさばいて、客人を家の奥に引き通しておもてなししたことが名前の由来とされる鍋料理です。

各家庭により鍋の具材はさまざまですが、共通するのは鶏を使うこと。メインの食材は「壱岐味鶏(いきみどり)」と呼ばれる壱岐産鶏です。生命力のある親鶏から生まれる重層的なコクと、かめばかむほど広がる旨みが特徴で、ほとんどが島内での流通に限られるため、まさに島ならではの一品と言えます。

壱岐味鶏の鶏ガラを2,3時間煮込んでとったスープには、黄金色の脂が浮かんでいます。一般的なひきとおしは砂糖としょうゆで甘辛く味付けたすき焼き風の出汁が多いのだそうですが、壱州茶屋 with ritomaruでは、壱岐味鶏の繊細で濃厚な味わいを邪魔しないよう薄口しょうゆをベースにし、あっさりとした味に仕立てています。この美しい出汁に、小さめにカットした壱岐味鶏、ゴボウや白菜、春菊、ネギ、エノキなどを入れ、火が通ったらできあがりです。

黄金色のスープを一口いただくと、驚くほどキレがよく、さらりとした味わい。喉を通る時、思わず唸ってしまうほど力強いコクを感じます。壱岐味鶏の押し返されるような弾力と、繊維の間からあふれる熟成した肉汁もたまりません。これまでさまざまな飲食店で経験を積んできた岩永さんも、壱岐味鶏には太鼓判を押しています。「壱岐味鶏の特徴は、何をしたっておいしいところ。塩だけでおいしいんです」。島で育った生命力あふれる壱岐味鶏には手をかけずとも、極上の味わいが生まれるのです。

この歯ごたえや肉々しさを生かす新メニュー「壱岐味鶏のソーセージ」も作っていただきました。ミンチにした壱岐味鶏を島内の豆腐店「川添とうふ」のおからと合わせ、同じく島内のクラフトビール店「アイランドブルワリー」のビールを加えた島づくしの一品です。親鶏ならではの肉感とジューシーさを、おからがやさしく受け止める。計算しつくされたバランスと、島の食材のポテンシャルを感じます。

海の恵みで固めた、濃厚な島豆腐

もうひとつの名物は、壱岐の特産である壱州豆腐を堪能できる定食メニューです。冷奴、揚げ出汁豆腐、白和え、おからひじき、豆腐のみそ漬け、みそ汁に豆乳……と、豆腐好きや健康志向の方にはたまらないヘルシーな小鉢が並びます。冷奴に箸を入れると、ミシッとした手応え。口に運ぶと、しっかりとした密度を感じます。かむほどに大豆の甘みがじわじわと広がり、最後にほのかな海のミネラル感が鼻に抜けるため、しょうゆは数滴で十分。冷奴がおかずとして成立する濃厚さです。

なぜこれほどまで濃厚な味わいが可能になるのか、その理由は島ならではの製法に隠されていました。海に囲まれた離島だからこそ、豆腐製造に使うのは、にがりではなく汲みたての潮(うしお)。海のミネラルがタンパク質を強力に結びつけ、しっかりとした歯ごたえに仕上がり、また、豆腐自体に天然の塩味がつくことにより、大豆の甘みを引き立て、これだけで完成された味になるのです。

地産地消のバトンを手に、人々をもてなす

壱州茶屋 with ritomaruは、2023年、長く島で親しまれてきた旧「壱州本陣」を事業継承し、オープンしました。先代の最も強い願いは「ひきとおしを継いでもらうこと」だったと岩永さんが話します。その頃と何ひとつ変わらない味を求め、観光客だけでなく地元の常連客も訪れるのだそう。「この島で育った食材のおいしさを感じてもらえたら」と話す岩永さん。先代の願いと、この島で受け継がれる地産地消の意志、おもてなしの心を引き継ぎ、これからも訪れる人を癒やしつづけていきます。

壱州茶屋 with ritomaru

壱州茶屋 with ritomaru

壱岐市郷ノ浦町片原触412-1 TEL:050-8886-0515

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