命輝く美味しい野菜
竹田かたつむり農園
竹田 竜太
2024.1.29
多様性や持続可能について思案する日々が今へと繋がっている
農家をする前、特別支援学校で教師をしていたんです。障害を持った生徒たちと露地野菜を育てたりしていました。教師をしている途中、青年海外協力隊で二年間サモアに行き、そこでも農業を教えました。その中で、豊かさや多様性、個性を伸ばすこと、何より持続可能なものなどについて考えていましたね。雲仙が地元だったんですが、同じ市内の吾妻町では四十年ぐらい前から有機農法が盛んだったこと、そこに種採りという伝統的な農法をしていた岩崎さんという先輩農家がいたこと、今の農園のある有明町は火山灰でできた黒ボク土という肥沃な土地で種採り野菜に向いていたことなどが今に繋がってます。
野菜作りは子育てと似ている。手を掛けつつ、干渉しすぎない
種採り野菜にまつわるストーリーは確かに注目されることが多いんですが、僕は美味しくない野菜は生き残れないと思っています。だから、美味しいものを育てることが一番ですね。そのために、種採りや土の状態などを工夫しています。同時に、手をかけすぎないようにもしています。こぼれ種で育つ野菜は、生長スピードが速く、虫や病気のない生命力溢れるものです。風や雨、月や太陽が野菜を育てるように、僕も自然の一部として干渉しすぎず、野菜と関わるようにしています。まぁ、子育てみたいなものかなあ。
伝統野菜は「食べる文化財」後世へ伝える決意とともに
野菜は「食べる文化財」であると思います。その土地、その土地で色や形の違った野菜があり、違う調理法で食べられる、その多様性が面白いんですよね。戦前までは、どこの農家もそうやって種採りをしながら、土地の野菜、土地の文化を繋いでいたんですよ。僕自身としては、種採り野菜のハードルを下げて、ベランダのプランターでいいから、その土地の伝統野菜を育ててみようとチャレンジしてほしいですね。野菜の美味しさと自分の健康、育てる楽しさ、多様な文化を守り自然と共生することなど、社会の本質的なものが分かるんじゃないかなと思いますよ。皆で一緒に楽しみながら、昔ながらの良さを後世に繋いでいきたいです。
ライター:カマサキ(#ナガサキタビブ)