素晴らしい食材を生み出す生産者の想いを
創造性あふれる料理に込めてお客様のもとへ

雲仙温泉 東園 
副料理長

橋本 伸陽

大久保 武志

橋本 伸陽

雲仙温泉 東園 
副料理長

2023.12.25

みそと乳製品の相性の良さを活かし和洋を織り交ぜたひと品に

麦みそ」や「米みそ」、純米酒などを使って甘鯛のみそ漬けを作りました。みそは乳製品ととても相性がいいんです。そこで今回は茹でたじゃがいもをバターや牛乳で伸ばし、ピューレにして合わせました。じゃがいもは島原半島産の「アイユタカ」という品種。しっとりとして、加熱すると豊かな風味が感じられるじゃがいもです。水から茹でた「アイユタカ」を鍋に戻してから炒りし、丁寧に裏ごしします。そしてたっぷりのバターと牛乳で、濃度を見ながら滑らかに仕上げていきました。甘鯛との味のバランスを考えながら、濃度や粘度を調整していくところが一番のポイントでしょうか。「洋食」のイメージが強いピューレですが、食材次第では「和」の料理とも良く合うんです。

みそも日本酒も!丁寧に醸造された食材が集まる島原半島

今回使用したみそは、国産原料を使い、昔ながらの製法でみそ造りを行っている「吾妻農産加工組合」さんのものです。「みそ漬け」を作る際、関西などでは米みそをたっぷり使って甘く仕上げるのですが、九州では麦みそ派が多いので、今回は麦みその配分を大きくしました。また、調味料の一つとして、純米酒「萬勝(期間限定酒)」を使っています。南島原市で「はねぎ搾り」という伝統の圧搾製法で酒造りをしている酒蔵・「吉田屋」さんのものです。和食ではよく日本酒を使います。日本酒が食材を柔らかくしてくれたり、アミノ酸が食材の旨味を引き出してくれたりするんですよね。大吟醸は飲むには大変おいしいお酒なのですが、料理に使うのは甘みが強すぎるので、私は純米酒を使います。こちらの方が米本来の香りがするから好きなんです。

味だけでなく、見た目でも楽しめる料理を

料理をする時には、味はもちろんのこと、見た目や彩りなど、視覚的にも楽しめる料理を心がけています。例えば、初夏には千々石産の川魚をご提供していますが、ただお皿に盛るだけではおもしろくありません。杉板にのせ、下からヒートパックで温めてご提供するようにしています。料理の温度や、野山の雰囲気を感じながらお客様に召し上がっていただきたいですね。そのほかにも、野菜をいけばなのように見立てて氷に盛りつけたバーニャカウダや、1席1席ごとに回って目の前で握る寿司など、特別感のある料理の演出を考えています。お客様の反応が良く、お喜びいただけた時には嬉しいですね。

料理人は生産者の想いをお客様に届ける代弁者

海産物、肉類、野菜…と長崎は食材の宝庫。いい魚介が身近で水揚げされ、新鮮なまま調理場に運ばれてくる恵まれた環境にあります。私たち料理人は、そんな素晴らしい食材を生み出す生産者の想いを、お客様へと伝える架け橋になりたいと思っています。生産者の皆さんの熱い想いを発信する代弁者でありたい。そのためにも食材調達のすべてを業者任せにするわけにはいきません。私自身も直売所へ赴き、旬の食材を見て回っています。いい食材や珍しいものに出合えた時には、本当に楽しいんですよ。

甘鯛みそ漬け焼きとじゃがいもピューレ

長崎で水揚げされた甘鯛を、雲仙市吾妻町産のみそに漬け込んで焼き上げました。添えているのは口当たり滑らかなじゃがいものピューレ。しっとり柔らかなみそ漬けは、クリーミーなじゃがいもと相性抜群。旨味たっぷりのひと皿です。

取材日:2023/3/8 ライター: 井川理恵子

雲仙温泉 東園

雲仙温泉 東園

住所:長崎県雲仙市小浜町雲仙181 電話番号:0957-73-2588

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