長崎にフランス料理の店を構えて21年になりますが、まだ「サステナブル」という言葉が知られて無かった当時から、SDGsを念頭に置いた取り組みをしています。長崎で野菜を作る農家さんや海で魚を獲る漁師さん方に敬意を表しながら、旬のものをその時期に頂く事で、季節を感じる…人としてのサイクルに叶った、シンプルでとても大切な事だと考えています。長崎は海や山に恵まれ、食材も豊富です。「ここでしか味わえない味」を長崎の歴史や文化を感じながら楽しんで頂ければと思っています。
長崎発の陸クエを湯引きにして、自家製の酢味噌で作ったソースと合わせる事で、長崎の食文化の歴史を表現してみました、加える彩りは黄色で統一。ゴールデンビーツと、2~3月が最盛期のはっさく、オイルで和えたからすみ、この季節にしか無い菜の花をちりばめ…それらが湯引きしたクエを支えています。長崎では湯引き酢味噌は、結んだネギと一緒に頂く風習がありますが、今回はネギの代わりに今が旬のノビルを加える事で、食した季節が鮮やかに思い出せるよう、工夫しています。サブタイトルの“MAIU JAUNE”ですがこれは、ツールドフランスの勝者が纏う黄色のジャージ「マイヨ・ジョーヌ」が由来です。長崎の地でフランスのエスプリを感じる料理を…「マイヨ」を「マイウ」にしたのは、私がホンジャマカの石塚さんの大ファンで、彼の代名詞である「まいう~」より名付けています。
陸上でクエが養殖出来ると伺い、ちょっとビックリしました。私は普段、養殖ものは扱っておりません。地元に海があり、あがった魚の旬を感じる料理を提供したいという想いがあるからです。しかし今回養殖クエを扱う機会を頂き、実際に扱ってみて、その鮮度の良さや脂の乗りには驚きました。血抜きや神経締め等の下処理も素晴らしく、とても良い状態でお渡し頂け、これは「皆が美味いと認めるクエ」だと感じました。養殖場にも見学に伺いましたが、生産者の鶴﨑さんの熱意には心打たれました。漁場が近くに無い地域や「今日はシケで魚が入らなかった」では済まされない大規模な旅館等で、このクエは大きな力を発揮するのではないかと思います。
ライター:MILK(#ナガサキタビブ)