雲仙市 「雲仙BASE」に、
トップシェフが集結。

長崎県産食材の勉強会Vol.2

大久保 武志

長崎県産食材の勉強会Vol.2

2023.11.10

今回は、スーツァンレストラン「陳」料理長 井上 和豊氏と「きょうの料理」プロデューサー矢内真由美氏が2022年12月9日~11日に行った、産地視察3日目に長崎県内料理人や生産者さんとともに行われた長崎県産の食材勉強会の様子をレポートします。

【参加生産者(50 音順)】

●雲仙市からの参加者
・小浜温泉ワイナリー 川島 貴宏 氏
・竹田かたつむり農園 竹田 竜太 氏
・登利亭 代表取締役 野副 智徳 氏
・雲仙こぶ高菜加工所 馬場 節枝 氏
・吾妻農産加工組合 松本 真美 氏

●南島原市からの参加者
・酒蔵 吉田屋 4 代目 吉田 嘉明 氏

長崎県産食材の紹介と料理実演による試食会兼交流会を実施

12月11日(日)、雲仙市観光局、雲仙福田屋の草野料理長協力のもと、廃校を活用した交流拠点・雲仙BASEの調理室にて長崎県産の食材勉強会を開催しました。

20名ほど県内の料理人や島原半島を中心とした生産者さんが集まり、井上料理長と矢内プロデューサーを交え、長崎県産の食材の紹介や、それらの食材を用いた料理の実演と試食会・試飲会を行いました。

東京から来た井上料理長の産地視察と長崎の食材

勉強会は、最初のテーマとして今回の勉強会を開催するきっかけとなったスーツァンレストランの井上料理長の自己紹介と産地視察の感想からスタート。長崎の食材に惚れ込み自分から使いたいと申し出て積極的に長崎県産の食材を自身の中国料理に生かしている井上料理長。生産者さんの高齢化と後継者不足への課題を挙げ、長崎県の生産者さんの目の力強さの印象と東京の料理人にも長崎県の食材のおいしさを広めたいと語りました。長崎県には何度か産地視察に来ているが、今回はゆったりとしたスケジュールで食旅を楽しむことができたと語りました。

その後、井上料理長が今回視察した生産者である吉田屋の4代目・吉田嘉明氏が参加者へ全国でも今はほとんどなくなってしまった伝統製法であるはねぎ搾りを写真とともその製法や自社商品を紹介。

そして、井上料理長が普段からよく使用されている食材である「対馬地どり」を生産者であり飲食店でもある登利亭の野副智徳氏からご紹介いただきました。対馬地鶏は全国に38種ある在来種の一つ。年間600羽しか流通しておらず、9割が県外に出荷されており、小売はされていない希少性の高い長崎県の地鶏です。

そして、井上料理長による長崎県食材を使った調理実演。当初、料理を一品頼まれていましたが、色んな方に来ていただくことがわかり、急遽地元だけの食材を使い中国料理にアレンジしたお料理を4品ほど提供することに。そのため、雲仙福田屋の草野料理長が助っ人に入り、始終、料理をしながら参加・交流されていました。

井上料理長の調理実演・一品目は「四川風ちゃんぽん」。視察中に食べた小浜ちゃんぽんを参考に、豆板醬の煮込みそばを卵でとじてアレンジしたもの。豆板醬でコクをだしピリ辛中華風ちゃんぽんを参加者に試食してもらいました。

続いて二品目は上海の醤蘿蔔 (ジャンローポウ)。パリパリとした歯ごたえのある中国風大根の醤油漬けのお漬物です。数々のコンクールで入賞しているお漬物好きの井上料理長の料理の決め手は先付けとして出されるこのお漬物だったともいい、漬物の大事さをアピール。

先ほど紹介された吉田屋酒蔵の日本酒にも合うとして、この後、試飲で持ってこられた代表銘柄の日本酒「萬勝」や日本酒をベースにした梅酒「歌酒」とのペアリングを楽しむ参加者もいました。

長崎和牛の調理実演と長崎県産酒とのペアリング

試食の後は、長崎和牛とお酒のペアリングのテーマに移ります。小浜温泉ワイナリー川島 貴宏氏が自社ワインである雲仙みかんワインと長崎ヌーヴォーを紹介。小浜温泉ワイナリーは2021年にイタリアンレストランとともにお店をオープンした長崎県本土では初のワイナリーです。長崎県産のみかんとぶどうでそれぞれ醸造したワイン2本を長崎和牛とのペアリングに提供しました。

長崎県物産ブランド推進課から長崎和牛についての紹介の後、長崎市から料理業組合加盟・料亭一力の山本卓氏による長崎和牛のローストビーフと蕪の炊き合わせの調理実演。

長崎県物産ブランド推進課から長崎和牛についての紹介の後、長崎市から料理業組合加盟・料亭一力の山本卓氏による長崎和牛のローストビーフと蕪の炊き合わせの調理実演。

五島牛のとうがらしという部位を使ったローストビーフを切り分け、盛り付ける調理台には参加者が集まり、山本氏が料理について説明しながら交流を図りました。

長崎和牛の炊き合わせの提供が終わった後、その間も料理を続けていた井上料理長の3品目が完成。長崎県の幻のれんこんともいわれる唐比れんこんを使い、穴にもち米を入れて甘く炊いた上海料理「糯米蓮藕(ノーミレンウォ)」。通常中国料理に使われる酒醸(ちゅーにゃん)を吉田屋酒蔵の百年甘酒で代用し、デザート感覚で食べられる一品を提供しました。

長崎じゃがいもと調理実演

試食や試飲が続けられる中、長崎県ブランド推進課による長崎じゃがいもの紹介に移ります。じゃがいも伝来の地でもある長崎県のじゃがいも生産量は全国3位。長崎県内では春秋の2回収穫されています。紹介の後、長崎県産のじゃがいも、ニシユタカ、アイユタカ、ながさき黄金の3種を蒸して食べ比べてもらいました。ながさき黄金は冷蔵貯蔵されていたものとそうでないものの2種類があり、甘さの違いも感じられます。

その間に日本中国料理協会長崎県支部支部長であるシェ・デジマの堀切章郎氏が長崎じゃがいもを使った料理の実演も始まっていました。

料理の盛り付けにも井上料理長や県内の料理人が手を貸し、素敵な絆も生まれていました。

今回、堀切氏が提案したじゃがいもを使った料理は、ながさき黄金を使った出来立てのアジサイ揚げコロッケ。アジサイ揚げは中国に影響を受けた長崎市の郷土料理「卓袱料理」の一品で、こちらのコロッケの中にはこちらも卓袱料理の一品である豚の角煮やほうれん草、メンマが入っています。

試食用とは別にお皿に盛り付けたものもご用意頂き、凝った料理のアイデアとプレゼンテーションで楽しませてくれました。

雲仙市の食材と郷土料理

そして、勉強会開催地である雲仙市の伝統野菜・雲仙こぶ高菜を、雲仙市伝統野菜を守り育む会の馬場節枝氏が紹介。同会が作成した「育てよう味わおう雲仙の食」という冊子にも触れ、雲仙こぶ高菜をはじめとする伝統野菜への思いを語りました。

そして、雲仙こぶ高菜を使った料理として新漬けと古漬けの二種類を使った「雲仙こぶ高菜の巻きずし」と生で食べてほしいと雲仙こぶ高菜をその場で刻んだものを参加者に試食してもらいました。

続いて吾妻農産加工組合の7代目代表である松本真美氏が吾妻みそをはじめとする同組合の加工品を紹介。吾妻みそでは厳選した国産の大豆、麦、米、塩を使い無添加で作っており、40年にも渡り昔ながらのおふくろの味を伝承しています。二種類のおかず味噌の試食とお土産にフリーズドライのみそ汁を提供しました。

雲仙の郷土料理の調理実演として、長崎県調理師協会雲仙支部長でもある雲仙福田屋の草野料理長がさつまいもの粉から作る郷土料理の六兵衛を用意。

トッピングには刻んだ雲仙こぶ高菜を乗せ、長崎にぼしで作っただし油をかけた瞬間に「ジュッ」という音の演出も。

その頃、井上料理長も農園に視察へ行った竹田かたつむり農園のご家族が到着。竹田さんから自身が育てる「雲仙種どり野菜」を紹介しました。

同行した矢内プロデューサーの感想と井上料理長アレンジの島原の郷土料理で締めくくり

勉強会の最後には今回、井上料理長に同行し長崎へ視察に来たNHK番組「きょうの料理」の矢内真由美プロデューサーが感想を述べました。井上料理長とは15年来の友人であり、30年近く料理番組に関わってきた家庭料理のプロ。郷土料理にも長年注目しており、直接現場に行く機会を伺っていたところ今回井上氏の長崎県への産地視察へ同行。伝統や地域の文化と風土を守り活動する生産者の方々の言葉に感動し、これからのモチベーションに繋がったと語りました。

そして、最後の料理実演では井上料理長の4品目、視察中に食べた島原の郷土料理である「具雑煮」が登場。通常入れるおもちの代わりに竹田かたつむり農園のつくね芋を団子にして代用。長崎の食材を使い、黒酢や唐辛子を入れて中華風にアレンジしました。

終始なごやかな雰囲気で進んだ長崎県の食材勉強会。

井上料理長は充実した三日間でぜひまた長崎へ来たいと語り、コロナで難しかった長崎県の生産者さんや料理人との念願の交流会が叶って嬉しいと喜んでいました。最後まで井上料理長をサポートし続けた雲仙福田屋の草野料理長は、自分の母校・元雲仙小中学校の調理室に一流シェフの井上氏が来てくれてこうした勉強会が開かれ感無量。雲仙BASEで開催している福田屋道場のポーズで写真が撮れたことを大変嬉しいと語りました。

今回の三日間の視察で井上料理長が出会った食材は今後、スーツァンレストランでの長崎フェアや東京日本橋長崎館でのイベントでの料理の参考にされるそうです。これからの井上料理長が手がける長崎県の食材と中国料理とのコラボレーションにも注目です。

 

取材日:2022/12/11 ライター: Miyako #ナガサキタビブ