今回、県産食材の中から「雲仙種採り野菜」と「対馬地どり」を使ったメニューを四品考えてみました。右上から時計回りに、「対馬地どりと雲仙種取り野菜の串焼き」、「対馬地どりのコンフィ 菜花ソース 三種の花芽を添えて」、「対馬地どり南蛮 手作りタルタル」、「対馬地どりと雲仙種取り野菜の治部煮風鍋」です。素材を見た瞬間に、パズルが組み合わされるみたいにメニューがポンポン閃いたんですよね。どれも、間違いなく美味しい!と太鼓判が押せる料理です。
「雲仙種採り野菜」は、普段から福田屋で提供する食事などでも使用しています。この野菜の魅力は、やはり新鮮さです。採れたての土付きで納品された野菜をその日のディナーでお客様に提供できるのは、本当に贅沢だと思います。そして、とにかく美味しいこと。これも魅力です。味が濃く、甘くて色も濃いので、わずかに手を加えるだけで料理の格が上がるんです。料理を提供する時に、農家の方から聞いた話も伝えることで、お客様にも、生産者の熱い気持ちと料理の美味しさにご満足いただいています。そんな生産者の姿を目の当たりにしてきたので、私自身も福田屋の自社農園を立ち上げ種をまき、その土地に馴染んだ野菜を育てるようになりました。
「対馬地どり」を使って料理する機会は、実はこれまであまりなかったんです。長崎県産食材の勉強会に参加したことがきっかけで、対馬地どりというものを知りました。てっきり対馬で生産されていると思っていたのですが、今はこの雲仙の土地で、伝統的な血筋を守り育てている養鶏農家さんがいらっしゃるとのことで、ぜひ使ってみたいと思いました。地鶏というとやはり固いというイメージがありますが、対馬地どりは全然固くないんです。そして、脂身が美味しいことにも驚きました。まるで鴨と鶏の間のような美味しい脂身を生かせるようにと、串焼きや治部煮を考案しました。長崎県内にはまだまだ魅力的な食材があって、県内を回ると、いっそ宝探しをしているような気分になります。
昔は、料理人側が立場が上で、「こんなもの使えるか」と突き返す人もいたぐらいでした。私は生産者の人をとてもリスペクトしてます。「こんな美味しいものを作ってくれてありがとうございます」という気持ちです。美味しい料理は料理人の力だけでできるんじゃないんです。それを可能にするために生産者の人たちの力は不可欠なので、一緒に料理を作り上げる仲間やチームのようなイメージです。素材ごとに生産者の顔が浮かぶと、より自信を持ってお客様にも提供できます。
やはり、長崎の雲仙に来ないと食べられない料理を今後も作っていきたいです。料理を食べるために、雲仙を旅行する、また長崎を旅行するという旅行の目的が料理となればいいなという願いがあります。ここには雲仙岳もありますから、島原半島内のポテンシャルの高い食材を吸い上げて、お山のてっぺんから発信していけたらな、といつも思っています。
取材日:2023/3/7 ライター:カマサキ(#ナガサキタビブ)