「手を加え過ぎないこと」により
食材の持つ力を活かしたい
ホテルニュー長崎
宴会料理担当料理長
川下 薫
2023.12.4
素材本来が持つ“力強さ”を活かした料理にしたい
昨年12月11日に開催された「長崎県産の食材勉強会」で出会った食材たちに興味を持ち、メニュー開発にトライしてみようと思いました。対馬地鶏のもも肉をメインに、送って頂いた野菜10種をほぼ使っています。今回取り扱った食材は、“素材自体に力強いもの”があるので、その個性を活かせるよう「なるべく手を加え過ぎないこと」に気を配りました。
低温調理で食材の旨みを大切に
対馬地鶏のもも肉は、甘麹を表面に塗り、6時間マリネしています。人参・大根・こぶ高菜・紅菜苔は細切りにし、詰め物用として加熱調理…これらを、むね肉と生クリーム等を合わせたムースと一緒にもも肉で巻いて、真空の袋に入れ低温調理機68℃で90分加熱しています。仕上げに表面に焼き色を付ける事により、外側はカリッと、中はジューシな食感が実現しました。
「手を加え過ぎないこと」が引き出す素材の個性
今回採用した「低温調理法」は、対馬地鶏本来の旨みを、よく引き出してくれていると思います。私は今までフランス料理をやってきましたので、これまでの経験を活かしつつ、素材本来の持つ味や食感を大切にしました。今まであまり使った事の無い食材もありましたが、その食材の個性を見極めて調理…食感的にも、一皿に柔らかいもの固いものが集まり、そのコントラストが楽しめる仕上がりになっているのでは、と思います。
対馬地鶏と雲仙野菜のロール 甘酒入りバルサミコソース
個性豊かな長崎県産食材を、1プレートに集結…「低温調理」により、本来の素材の旨みを活かせるよう「手を加え過ぎないこと」に気を配った逸品。メインの対馬地鶏の周辺を彩る野菜類も、味わい豊かな仕上がりです!
魅力溢れる県内食材に、今後も着目していきたい
仕上げには、百年甘酒とバルサミコ酢を煮詰めたソースを使い、季節を感じる菜の花をあしらってみました。甘酒には粒々があり、始めは濾してしまおうかとも思いましたが、結果濾さない方が良かったです。程よい酸味が、地鶏の旨みを引き立てていると思います。低温で揚げたドラゴンレッドのフライドポテトや、千切りにして揚げた五寸人参なども、プレートに彩と味のバリエ―ションを加えています。今回、雲仙での勉強会に参加してみて、生産者さんの高齢化と後継者不足の課題もある中、島原半島には大変魅力的な食材が沢山ある事を知りました。今後も使用を検討したり、興味を持って着目していきたいと思います。
取材日:2023/2/27 ライター: MILK #ナガサキタビブ