島原地区

火山の恵み

島原半島の中心で圧倒的な存在感と雄大美を放つ雲仙岳。火山の恵みが育んだ農作物や風土に息づく味わいは、食通をも虜に。

島原半島シマバラハントウ

山と海、そして畑が広がる風景はスケールが大きく、火山とともに共生する人々の営みを感じさせる

豊かな自然に
恵まれた半島で
火山のエネルギーを
体感する

長崎県の南東部に位置する島原半島は、全域が日本で初めて「ユネスコ世界ジオパーク」に認定されています。真ん中に位置する雲仙火山の活動によって形成された雄大な山々は、ダイナミックな自然のエネルギーを感じさせます。また世界文化遺産・原城跡や島原城、武家屋敷など、歴史と文化を感じられるスポットも豊富。そして火山の恵みを受けた栄養たっぷりの土壌で育った農産物や、有明海・橘湾といった豊かな海で獲れた魚など、今や全国から注目を集めるほどの優れた食材の生産地です。火山と人の営みが共存する島原半島には、たくさんの魅力が溢れています。

ベジドリーム

直売所コーナーには季節ごとに異なる野菜が並ぶ。それぞれの旬の時期を大切にしている

雲仙・島原の多彩な
野菜の魅力を伝える
直売所とカフェが
一体となったお店

雲仙市国見町の広域農道沿いにある「ベジドリーム」は、農産物直売所とカフェレストランが一体となったお店。豊かな自然に恵まれた地元の野菜を届けようと、様々な加工品やメニューを提供しています。直売所コーナーには、その日の朝に契約農家が持ち込んだ旬の野菜が並び、生産者の名前も。そして体や環境にやさしいオーガニック食品や、日々の暮らしに取り入れやすい雑貨も販売中。これだけのアイテムが揃った場所は雲仙でも珍しく、休憩がてら立ち寄ってもついつい長居して選びたくなります。

休日限定のサラダバーは、自分の好みのドレッシングが見つかる絶好の機会

野菜と調味料だけで
作られた
素材が際立つ
ドレッシング

特に人気の商品が、自家製の「雲仙ナチュラルドレッシング」。保存料や甘味料、着色料といった添加物を使用しないシンプルなドレッシングで、素材の風味を最大限に活かしています。お肉やお魚を使った料理とも相性抜群で、いつもの食卓が華やかに、そして健康的になります。現在はセロリ、ビーツ、にんじん、みかん、たまねぎ、いちごの6種類のドレッシングを販売中。添加物を加えていないため、野菜の収穫状況に合わせて微調整しながら随時製造しています。金土日はカフェスペースでランチを頼むと、ドレッシングを自由に試すことができるサラダバーが付いてきます。

果物や野菜の甘さが際立つスムージー。窓からは、天気が良いと熊本の方まで見えることがあるそう

おいしい野菜と
自然の風景
雲仙の2つの魅力を
一度に味わう

カフェメニューも充実しており、地元野菜をたっぷりと使ったスムージーもオススメ。色鮮やかで健康的なビーツや甘くてスッキリ飲みやすいイチゴ、子どもに大人気のバナナなど、ドライブ途中に気軽に楽しめます。「雲仙といえば、おいしい野菜と自然の風景、この2つですよね」と語る代表の小林芳子さん。どちらも楽しめるベジドリームは魅力満載で、島原半島の豊かさをおいしく体感することができます。

住所
〒859-1308 長崎県雲仙市国見町神代辛856-1
TEL
0957-60-4373
駐車場
あり

平野鮮魚店ヒラノセンギョテン

だしの旨みが効いた味噌汁や小鉢も満足度が高く、幅広い客層に親しまれている

旬の魚が渾然一体
色鮮やかな海鮮丼

昔ながらの鮮魚店が営んでいる食事処で、地元で獲れた新鮮な魚が主役のメニューを、直営ならではの手頃な価格で堪能することができます。刺身や天ぷら、フライなどの定食が揃っていますが、なんといっても一番人気は贅沢かつリーズナブルな「海鮮丼」。取材日はシマアジ、スズキ、ヒラスなど旬の魚ばかりが10種類も盛り付けられており、色鮮やかな飛び子もアクセントとなっています。これだけ多彩な魚を一つの丼としてまとめるポイントが、ふんわりとした山芋。まろやかに全体を包み込むことで、女性でもするりと完食できるおいしさに仕上げています。さらに贅沢に楽しみたい人には、うに、いくら、車えびが追加された「SP海鮮丼」も一押しです。

広々とした店内が、休日になるとあっという間に満席に。鮮度抜群でおいしい海鮮丼ときれいな景色、わざわざ目的地として訪れたい人気店

地元に根付いた
鮮魚店が
直営する食事処

有明海に面した国道から裏通りに入った場所にある「平野鮮魚店」。店先には生簀が並び、近くの市場から仕入れた旬の魚が泳いでいます。休日になると遠方からも多くの人が訪れる人気店で、店内には広々とした座敷席が用意されています。天気の良い日は海沿いのテラス席がオススメで、のんびり食事と会話を楽しむことができます。

見事な包丁捌きで魚を切り分ける平野さん。厨房では仕込みの他、鮮魚店としての注文に合わせた魚の下処理も行う

獲れたて新鮮な魚を
自ら料理して
喜ばせたい

平野鮮魚はもともと地元のホテルや病院、保育施設への卸販売を中心に営んでいました。3代目の平野義ニさんは福岡の鮮魚店で修業。その期間に直接魚を捌いて提供する飲食店と繋がり、いつか自分もやってみたいと感じたそう。一旦Uターンした後、今度は地元のスーパーや寿司店で修業を重ね、魚の捌き方や調理の技術を習得。念願だった食事処をオープンすると、徐々に口コミで評判が広まりました。「余裕ができたら、夜にお酒と楽しむような魚のコース料理をしたいですね」と話す平野さん。卸販売と食事処という二足の草鞋で忙しいものの、おいしい魚を自ら料理して喜ばせたいという気持ちが原動力となっています。

住所
〒855-0822 長崎県島原市中組町257-1
TEL
0957-62-4644
駐車場
あり

La Spiagginaラ スピアッジーナ

有機栽培に取り組む地元農家から定期的に送られる旬の野菜を使った前菜。黒田五寸人参など地域で受け継がれてきた品種も多く、それぞれの特徴を活かして調理

食材の持つ個性を
活かした料理を
この場所でこそ
味わってほしい

地元のおいしい食材を使った料理を、地元の人にこそ食べてほしい。そんな気持ちを強く持ち続け、日本やイタリアでの修業を経て、生まれ育った雲仙市小浜町にイタリアンレストラン「La Spiaggina」をオープンした岡村雅人さん。素材や調理法にこだわりながら、その料理はあくまでシンプル。それでいて格別のおいしさで大満足させてくれるのは、島原半島で育まれた有機野菜のもつパワーと、それを引き出す確かな技術の掛け算があってこそです。お店を訪ねると、朝届いたばかりの色とりどりの野菜がズラリ。有機野菜を育てる地元農家と契約して、旬の野菜を届けてもらっているそう。「どんな野菜がどのくらい届くのかは決まっていません。届いたとれたての野菜を見てからメニューを決めていきます」と岡村さんは話します。

イタリアから取り寄せた薪窯。イタリア・ナポリのピッツェリアでの修業を経て繊細な温度管理の感覚を身につけた岡村さんは、無駄のない動きでピザを焼き上げる

シンプルでありながら、
奥深いおいしさ
楽しいひと時に
寄り添う極上のピザ

この日は地元産のじゃがいもを使ったピザを作ってもらうことに。見るからに柔らかそうで艶のある生地は、まるでパンのようにふっくらと発酵が進んでいます。手際よく広げた生地の上にスライスしたじゃがいも、地元で獲れたカタクチイワシを使った自家製のアンチョビ、チーズをのせて仕上げにオリーブオイルをかけたら、厨房で一際目を引く大きな薪窯へ。あっという間に焼き上がったピザは薪の香りが香ばしく、食欲をそそります。材料自体はベーシックですが完成度が抜群で、飽きのこないおいしさ。「ゆっくりおしゃべりしながら、楽しく味わってもらえたら」と話す岡村さんは、こだわりを押し付けることなく、あくまでお客さんの目線を大切にしています。

イタリア産を中心に揃えているワイン。料理に合わせたペアリングは、ソムリエの資格を持つ岡村さんが丁寧に教えてくれる

雲仙の生産者や
料理人と繋がり
さらなるおいしさを
追求する

窯の薪火でじっくり加熱し旨みを引き出せば、新鮮な有機野菜が立派な前菜の一品に。調理も味付けも手をかけすぎないのは、地元食材のおいしさを信じているから。「極端に言えば、自分は地元のうまい食材を焼いて出すだけ」なんて笑う岡村さんですが、直接畑を訪ねて生産者と交流し、同じ雲仙市内の料理人仲間とも情報交換を行うなど、さらなるおいしさを追求しています。「地元の人に『おいしかね』って言ってもらえるのが一番嬉しい」という言葉には、生まれ育ったこの場所で、この土地の素材を使って料理することの、純粋な喜びが感じられました。

住所
〒854-0515 長崎県雲仙市小浜町北野3225-3
TEL
0957-73-9586
駐車場
あり

山の寺 邑居ヤマノテラ ユウキョ

春〜夏メニューの「手延べそうめん」と「黒ゴマそうめん」。目にも涼しい流しそうめんを自由に楽しむことができる

豊かな風味と
コシが特徴の
南島原産の
手延べそうめん

山間の道をしばらく登った先に見えてくる〈邑居〉では、田舎の懐かしさを感じさせる空間で、季節ごとのメニューを楽しめます。4月から10月にかけては南島原市の特産品である「手延べそうめん」が登場。起源は諸説ありますが、南島原の温暖な気候がそうめんづくりに適しており、一大生産地として発展しました。豊かなコシと風味は、気温や湿度に合わせて水分量や乾燥時間を微調整する職人技が存分に発揮されています。それぞれのテーブルごとに流しそうめんの設備があり、冷たいそうめんを自由に満喫できます。ベーシックな手延べそうめんだけではなく、黒ゴマそうめんも人気です。ゴマの風味が爽やかで、一味違ったおいしさ。せっかくなら2種類の食べ比べがオススメです。10月から4月にかけての寒い時期は、具材たっぷりの暖かい鍋やだご汁が登場します。

毎日お店で手作りしている「落花生豆腐」は濃厚な味わいとすっきりした後味が特徴。広々とした座敷、四季折々の景色に囲まれている

四季折々の
自然と食を満喫
どこか懐かしい
田舎の店

旬の食材を活かした一品メニューも盛りだくさん。「鶏の唐揚げ」や「地野菜の天ぷら」といった定番の他にも、島原産の落花生を使用した自家製の「落花生豆腐」もイチオシ。弾力がありながらも滑らかな食感で、少しずつ口の中に広がる落花生の風味がクセになります。店内の窓からは、美しい自然の景色を間近に見ることができます。特に夏は避暑地としても人気で、涼しい風と新緑に癒されます。秋の紅葉、冬の雪景色も風情があって魅力的。幅広い年代が一緒に楽しめるお店なので、2世代・3世代の家族みんなで足を運びたいお店です。

「純喫茶プリン」のほか、多彩なパンやスイーツ、ドリンクが充実したオシャレなカフェが同じ敷地内にオープン

待ち時間や
カフェタイムに
オシャレな空間で一息

同じ敷地内に建つ「SUGAR MAN’S CAFE」は2023年にオープン。〈邑居〉の待ち時間や食後の一息に訪れたいオシャレなカフェです。木目を活かしながらシックなインテリアでまとめた店内は居心地よく、ついつい長居したくなります。島原の湧き水を使用したドリンクに、国産小麦100%の焼きたてパン、夏にはボリューミーなサンドイッチも用意。昔ながらの「純喫茶プリン」はしっかり目の食感と控え目な甘さで、かわいらしい盛り付けも魅力的です。さらにカフェの向かいにはブルーベリー農園があり、予約不要・時間無制限のブルーベリー狩りを楽しめます。食事に、カフェに、収穫体験まで。自然に囲まれた〈邑居〉に足を運べば、まさに田舎の家に帰ってきたような癒しのひと時を過ごすことができます。

住所
〒859-1505 長崎県南島原市深江町戊3988-22
TEL
0957-65-1550
駐車場
あり

酒蔵 吉田屋サカグラ ヨシダヤ

天井から縄で吊るされた巨大なはね木。少しずつ重りを足していくことで圧力をかけていく。全て搾り切るまでに約2日間かかるそう

時間と労力を
惜しまず、丁寧に
昔ながらの製法で
おいしさを追求

ゆっくりと縄を緩め、重さが増すたびに軋む滑車。酒袋に入った醪(もろみ)をテコの原理で一滴ずつ搾っていくはねぎ搾りは、かつて日本の酒蔵で一般的だった製造方法です。機械による効率的な搾り方が普及した今、全国でわずか6軒ほどまで少なくなったはねぎ搾りを行う酒蔵の一つが、南島原市にある〈吉田屋〉。「膨大な時間と労力をかける、昔ながらの手法でしか生まれない味があるんです」と語るのは、杜氏(とうじ)を務める5代目・吉田嘉一郎さん。徐々に重さをかけて絞ることで、まろやかなおいしさを実現。機械とは違い、最後まで絞りきらないことで、雑味のないクリアな味わいの日本酒に仕上がります。そのまま名前となった日本酒「はねぎ搾り」は、多くのファンに愛され、遠方からも注文が入っています。

築100年以上の建物が並ぶ敷地内では、酒蔵見学も受付中(要予約)。5代目の吉田嘉一郎さんは、茨城県の酒蔵で修業した後にUターン

オンリーワンの
日本酒を。
伝統的なはねぎ搾りを
復活させる

島原半島の南部に位置する「吉田屋」は、大正6年創業。他の酒蔵同様、当初は大きなはね木で搾っていましたが、昭和の時代に機械化が進む中、一時は圧搾する機械を導入。より効率的に地元向けの普通酒を中心に造っていましたが、徐々に販売が伸び悩みます。そこで約20年前、嘉一郎さんの父・嘉明さんが蔵に残されていたはね木に注目。独自性のあるお酒で、県外にも南島原ブランドの日本酒を届けようと、何度も試行錯誤を重ねてはねぎ搾りを復活させました。すべてが手作業なので手間も労力もかかりますが、だからこそ生まれるふくよかな味わいは、まさに「吉田屋」の個性となりました。「最近はフレッシュさを打ち出した日本酒も人気ですが、時間と手間が醸し出す独特の風味も楽しんでいただけたら」と吉田さんは笑顔で話します。

吉田さん自らラベルの絵とデザインを手掛けたシリーズ「冬春夏秋-HITOTOSE-」。酒蔵を改装したカフェでは甘酒や水出しコーヒーを楽しめる

伝統と進化の
両輪で進み続ける
吉田屋の酒造り

伝統的な製法を守り続けながら、新たな試みにも積極的にチャレンジ。長崎県産の酒米 山田錦を使用した純米大吟醸「BANG」では、オシロイバナの花酵母を使用しています。「冬春夏秋-HITOTOSE-」シリーズは、日本の四季がテーマで、季節ごとに味わいの異なる4種類が登場。さらに「味わいだけでなく、いつ・どこで・だれと呑むのか、そういったシーンも含めて楽しんでほしい」と、お酒を飲んでいる様子の投稿写真からミニポストカードを制作する企画も発案しました。また敷地内のカフェ「cafe kULa」では、麹の粒感が特徴的でサラリと飲みやすい甘酒や、日本酒造りに使用する仕込み水で抽出した水出しコーヒーを提供。レトロな空間も居心地抜群です。

住所
〒859-2202 長崎県南島原市有家町山川785
TEL
0957-82-2032
駐車場
あり

リソサムニューム礁リソサムニュームショウ

石灰藻が集まった白洲(リソサムニューム礁)。場所や時間帯によって、まるで海の上を歩いているかのような写真を撮ることがる

原城跡の沖合に浮かぶ
礁が生み出す
世界的に珍しい
幻想的な浅瀬

世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連資産」の構成資産・原城跡の沖合いに浮かぶひょうたん型の浅瀬(白洲)。リソサムニュームとは海洋生物(藻)の一種で、石灰分を含みサンゴのように礁を作るそうです。世界的にも珍しく、インド洋とイギリス海岸、そしてこの原城沖という3ヶ所でしか見ることのできない貴重な場所。4月から8月の最干潮時にはその一部が姿を表すため、船に乗って上陸することが可能です。見学ツアーでは、幻想的な光景や浅瀬の生き物が見られます。

住所
〒859-2412 長崎県南島原市南有馬町大江名原城本丸跡沖合

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巡ろう、長崎の至福の一杯。酒マニア