五島地区

地産の宝庫

大地の営みがもたらした豊かな産物や海の恵み。五島列島には宝物のような食材が溢れ、人々を魅了し、新しいストーリーを紡いでいます。

若松大橋ワカマツオオハシ

潮の流れが速く、養殖業が盛んな若松瀬戸。ここで育った養殖クロマグロは、長崎県の「推し魚」第一号に選定

弧と輪が交わる場所で
潮が生み出す
「黒い宝石」

入り組んだ海にポコポコと浮かぶ島。そのあいだにかかる弧。かつて船でしか渡れなかった新上五島町の若松島と中通島を結ぶ、五島列島最大の道路橋・若松大橋です。長さは522メートル。眼下には、澄んだ海と入り組んだリアス海岸の風景が広がり、西海国立公園にも指定されています。等間隔に並んだ丸いイケスはクロマグロ養殖のもの。潮の流れが早く、海水の透明度が高いこの海で育ったクロマグロは、その品質の高さから、近年全国に知られるようになりました。自然の恵みと人々の手間と技が育てたクロマグロは、まさに「黒い宝石」です。

住所
〒853-2301 長崎県南松浦郡新上五島町若松郷
駐車場
あり

五島つばき蒸溜所ゴトウツバキジョウリュウショ

椿の花をイメージしたボトル。まずはストレートで、香り立つアロマを感じてほしい

クラフトジンが語る
この土地の記憶と香り

コルクを開けた瞬間に、広がる華やかな香り。このままずっと酔いしれていたいと思うほどです。アルコール度数47%の数字に反し、やわらかで、しなやかな飲み口。レイヤーは重なれど、角は立っていません。香りの余白を崩さず、どこまでもおだやかな味わいです。「おいしいという感想の先に、風景が浮かび上がるようなジンを作りたかったんです」。そう話すのは、GOTOGINを製造する「五島つばき蒸溜所」の広報・小元さん。福江島の北、半泊(はんとまり)という名の小さな集落で生まれたこのクラフトジンには、海の気配、山の匂い、木造教会の光と静寂、人々の慈愛、そして祈りが宿っています。

ボタニカルを1種ずつ仕込むのは、小ロット生産の蒸溜所ならでは。カッティングポイントを見極める鬼頭さんの眼差しに、思わず空気が張り詰める

慈しみのツバキ、
清らかに。
十七色で描く
香りの油絵

思いと香りの核にあるのは、島に自生し、人々の暮らしを支えてきた椿です。椿のタネ、椿茶、椿油の搾りかす。そして同じく島で育った柚子と和紅茶。これらを含む全17種のボタニカルを、ドイツ製の銅製蒸留機と、超軟水の島の湧水で仕込んでいきます。蒸溜所の壁際にはずらりと並んだタンク。ボタニカルを1種ずつ抽出するため、これだけの数が必要なのだそう。ジンは油絵具のような複雑な表現が可能だと話すのはブレンダーの鬼頭さんです。ちょうどテイスティングの最中でした。雑味のある部分を切り落とし、最良の部分だけを抽出します。素材の個性、抽出法、ブレンド比率。そのすべてが整うことで、風景を描き出すクラフトジンが生まれます。

蒸溜所の見学者は、はじめに教会へ案内される。控えめな外観ながら、その存在は大きい

導かれ、この土地へ。
思いと香りが
羽ばたいていく

蒸溜所の隣に建つのは、1922年に献堂された半泊教会です。「国内をいろいろ見て回りましたが、この土地以上の場所はありませんでした。この教会の優しさや慈愛の精神を香りとして届けたかったのです」と小元さん。この土地で五島つばき蒸溜所がスタートしたのは、奇しくも教会献堂から100年の節目でした。教会と同じ作家が手がけた蒸溜所の窓を彩るステンドグラスには、五島の空、ツバキのマーク、高浜海水浴場、大瀬崎灯台、鬼岳が描かれています。「どんなストーリーがあって、どんなコミュニケーションがあっても、最終的に飲んで感じてもらうことが重要」と鬼頭さん。グラスを傾けた人にだけ、この土地の記憶は静かに語り始めます。

住所
〒853-0054 長崎県五島市戸岐町1223-5
TEL
非公開
駐車場
あり

鬼岳オニダケ

「日本ジオパーク・五島列島(下五島エリア)」の主要地質・地形サイトのひとつに指定されている

草原に包まれた絶景は
五島の美食の
要石だった

福江島東部にそびえる鬼岳(標高315m)は、丸みを帯びた山肌を一面の草原が覆う美しい火山です。裾野にはミネラル豊富な湧水が流れ、肥沃な火山性土壌が広がります。数年に一度行われる「山焼き」では、自然の力強さと人々の営みを感じる迫力満点の光景を見ることができます。人の手が入ることにより守られ続けてきた「人と自然の共同作品」とも言えるこの自然環境は、山だけでなく、福江島全体の農林畜産にも豊かな恩恵をもたらしています。

住所
〒853-0013 長崎県五島市上大津町
TEL
0959-72-6111(五島市役所)
駐車場
あり

五島リトリート ray by 温故知新ゴトウリトリートレイバイオンコチシン

新鮮さはお墨付きのアワビ、ハガツオ、イシダイ、シマアジ……。獲れたその日に市場にならび、人々の口へ

質も種類も段違い
五島の海の
底力に唸る

新鮮な海の幸に恵まれた五島列島。その恵みを、凝縮したひと皿があります。「五島うどん 生雲丹 肝ソース」。長崎県産の生ウニ、五島産のアオサ、アワビ、そしてアワビの肝ソースの下に、ツバキ油を練り込む五島ならではの製法で作った手延うどんを忍ばせた一品です。海の幸の豊かさはほかにも。五島近海で獲れた旬の鮮魚を盛った「季節の鮮魚 お造里」です。この日は、五島の赤身の代表格ハガツオ、身が締まったイシダイ、脂が香る天然シマアジの3種。「市場には、五島近海で獲れた魚しか並ばないので、新鮮さや質は段違い。五島の海産物の素晴らしさを感じる日々です」と料理長の山本さんが話してくれました。

島内で育った希少性から「幻」と言われる五島牛をしゃぶしゃぶに。ほんのりロゼ色に火を通すと、とろける脂身が口の中に広がる

五島ならではの食材を
シンプルな調理法で

恵みは山にも。ミネラル分が豊富で、柔らかな肉質が特長の五島牛がその一つです。はじめの1年間、ほぼ毎日五島の市場へ足を運び、食材への理解を深めた山本さん。次第に、調理スタイルにも変化が生じました。「手を加えて試行錯誤するより、できるだけシンプルな調理法がお客さまの反応も良いんです。それは、元々五島の食材が持つ素材の力のおかげだと思います」。五島の魅力ある食材について伺うと、次から次へと話が広がります。随一の処理により概念が変わるジビエ肉、生産者が仲買人を介さず卸す新鮮野菜、五島では一年中揚がるクエなど。島の伝統食や文化、栽培や加工の技法を活かすための山本さんの試みは続きます。

ホテルは、鐙瀬溶岩海岸と鬼岳のあいだに位置する。雲の隙間から差す光は、希望を連想させる

山と海のはざまで
土地の光を
集めた一皿を

レストランから北を見ると、雄大な鬼岳が。南には、黒くゴツゴツとした鐙瀬(あぶんぜ)溶岩海岸が広がります。鬼岳の溶岩が流れて、冷えて固まったことによりできた海岸は、魚や貝、海藻の成長に大切な役割を担っています。壁に飾られた写真の前で、総支配人代理の茂谷さんが歩みを止めました。施工時に撮影された光芒の写真です。神聖さを感じる1枚。この土地でつながれてきた希望や祈りを込め、ホテル名に「ray」(=光線、光)と付けたのだと言います。火山と荒々しい海、そのあいだに差す一筋の光。その恵みすべてが、一皿ひとさらに込められています。

住所
〒853-0023 長崎県五島市上崎山町2877
TEL
0959-78-5551
駐車場
あり

五島列島製麺所ゴトウレットウセイメンジョ

毎朝手打ち製法の製麺機でソバを仕込む。日により、二八/十割と配合を変え打つのだそう

在来種の
ソバを目掛けて
わざわざ訪れたい
蕎麦処

数年前、五島在来種のソバを提供する製麺所が誕生しました。福江島の富江地区にある五島列島製麺所です。人気だという五島牛の肉めしと盛りソバの定食を注文しました。細打ちで、角のたった麺線、手打ち特有のざらりとした食感と強い香り、のどごしの良さ。食べる前から、喉をとおった後まで、無駄のないおいしさを感じます。合わせるのは肉めし。甘辛く味付けされた大ぶりの五島牛薄切り肉が、白ごはんの上を分厚く覆っています。真ん中には、新鮮で栄養価の高い地元養鶏場の卵黄が。とろりと溢れ出した黄身に、旨みの強い五島牛を絡め、一口で。この味の安定感はどこから生まれているのでしょうか。

山下という地区で盛んだったソバ栽培が、次第に島内に広まった。五島列島製麺所では、契約農家・大山さんの栽培したソバを使用している

「自産自消」の文化を
タスキに
島民の「ふつう」
=島外の「うまい」

五島列島製麺所が、五島手延うどんではなく、あえてソバをメニューに据えた理由は、この島に根づく文化にあります。その文化について教えてくれたのは、五島列島製麺所のメニュー監修を行う〈創作郷土料理いつき〉の出口さんです。福江島では、各家庭で年越しのためにソバを育て、近所同士お裾分けをしていたそう。地元の方々が、世代を超え、種を分け合って紡いできた五島在来種。出口さんが営む農園〈慶宝園〉でも種を自家採種し、ソバ栽培を続けています。一般的なソバとの違いは「わからない。そもそも五島のソバしか食べないから」と笑う出口さん。五島の土壌がソバ栽培に適しているのではと話してくれました。

「島内の逸品が知られていないのはもったいない!ぜひ日の目を当てたい!」。社長・山本さんの肝入り事業としてスタートした

島内の逸品を集めた
五島の「うまかもん」
発信拠点

店の目指すところは、島の観光拠点や食の発信地としての役割を果たす道の駅のようなお食事処。その言葉どおり、店舗奥には、五島の名産を集めたアンテナショップがありました。五島列島の知られざる逸品を、島外・県外の方へ届けたい。そんな願いが込められています。ソバや肉めしの素はもちろん、五島牛のハヤシライスや天然あおさ、切り干し大根、柚子胡椒、めんつゆなどのオリジナル商品から、GOTOGIN、ツバキ製品、カマボコ、かんころ餅など五島らしさの詰まった品揃えです。人々の手で生まれた五島の品々を、観光客にも、島外の方にも伝える場所が、ここにありました。

住所
〒853-0215 長崎県五島市富江町職人304-9
TEL
0959-86-2287
駐車場
あり

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