新鮮で質のよい季節の食材を厳選し愛情をもって、持ち味を最大限に引き出す。

日本料理「旬房」
副総料理長 和食統括

根笹 卓也

大久保 武志

根笹 卓也

日本料理「旬房」
副総料理長 和食統括

2024.2.16

鮮度をキープできる「五島〆」の技術に感動

私は、和食一筋で経験を積み、2005年より「旬房」の料理長を務めています。料理を作るうえで大事にしているのは、食材に愛情をもち、丁寧な仕事で旬の素材の持ち味を活かすこと。近年は生産者さんの意識が高く、食材がどんどんいいものになっていると感じています。長崎県の食材は、とりわけ魚介の品質がよく、今の時期なら「アラカブ」と呼ばれるカサゴやノドグロ、トラフグなど魚種も豊富。五島列島を訪れた際に、漁師さんと一緒に船に乗って魚の処理まで見学させてもらうなど、生産者さんと交流を持てたことで、食材への愛情がさらに深まりました。「五島〆」という処理の仕方が非常によいので、魚体が安定した状態でお店まで届くんです。またトラフグはさっぱりしながらも旨味があって、薄切りにしても噛むほどに旨味を感じられます。白子も今が一番おいしい時期ですね。

やわらかく旨味の濃い五島牛は、シグネチャーの「すき煮」に

長崎県産の和牛は、「旬房」で10年以上お出ししているシグネチャー「和牛のすき煮」に仕立ててみました。当店は個室が多く、記念日やお顔合わせ、接待などのご利用も多いため、お客様がすぐに食べられるように厨房で完成させてからお出しすることにしたのが開発のきっかけです。オーダーが入ってから肉を割下と絡め、タマネギや豆腐などと一緒に「宝楽」という陶器で熱してから提供するので、立ち上る香りやジューッという音も楽しんでいただけます。今回使用した五島牛は、サシがそこまで多くなく、脂が強すぎないのでとても好みの味です。肉質がやわらかく旨味があるので、ローストのようなシンプルな調理にも向いていると思います。

長崎県産特選和牛 すき煮

味の濃い種とり野菜は、ゆうこうと椿油のドレッシングで

長崎の食材では、雲仙の「種とり野菜」も興味深いです。種類は指定せず、その日に採れたものを産地から送ってもらっているのですが、鮮度がよく、それぞれの野菜にしっかりと味があるのが特徴です。2月限定のコースでは、ゆうこう果汁と椿オイル、隠し味に醤(ひしお)を加えたドレッシングを合わせてサラダにしたり、シンプルに焼き野菜などに仕立てたりしています。また、和食では普段、オイルを用いることは少ないのですが、椿オイルは品質がよく、ナッツのような個性的な香りがお気に入り。アオリイカのお刺身に合わせたりもしています。

異国文化が融合したご当地グルメも、長崎県の魅力!

長崎は、食材の魅力はもちろんですが、知られざる伝統料理や、異国文化が融合したユニークな料理もたくさんありますよね。そうした長崎のグルメも当店で楽しんでいただければと思い、ランチ限定ではありますが、ご当地グルメを盛り込んだ「当地よくばり御膳」を考えてみました。室町時代から続く郷土料理「大村寿司」や、五島列島の「地獄炊き」、対馬地鶏でだしをとった「ちゃんぽん」、佐世保バーガーなど、現地で親しまれている料理を「旬房」流にアレンジしています。東京ではなかなか食べられないこともあって、お客様にも好評です。

取材日:2023/2/7 ライター: 笹木理恵

旬房(グランド ハイアット 東京6階)

旬房(グランド ハイアット 東京6階)

住所:東京都港区六本木6丁目10-3グランドハイアット東京6階 グランド ハイアット 東京

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