交差する感性が、長崎の食を更新する

イベントレポート                            WAKARAN Food Session

大久保 武志

イベントレポート                            WAKARAN Food Session

2026.5.8

2026年3月13日・14日の2日間、県内料理人と国内トップシェフがそれぞれの視点から長崎にしかない食の価値を掘り下げるイベント「WAKARAN Food Session」が開催されました。
舞台は、幕末の志士たちも訪れたとされる長崎最古の料亭「一力」。
歴史と革新が交わる空間で生まれた、静かな情熱と美食の時間を振り返ります。

 

<イベント概要>

日時: 2026年3月13日(金)18:30~

 2026年3月14日(土)12:00~/18:30~

会場:料亭一力(長崎県長崎市諏訪町8−20)

内容:長崎県産の食材と、「和」と「洋」を掛け合わせた

 2人の共創による2日限りの特別な卓袱料理コース ※事前申込制

歴史が息づく料亭で出会った、二人の料理人

今回の「WAKARAN Food Session」は、料亭一力8代目・山本 卓氏と、国内外のガストロノミー界で高い評価を受ける福岡の名店「Goh」シェフ・福山 剛氏の共創から生まれました。

料亭一力 8代目 山本 卓 氏(長崎)
Goh シェフ   福山 剛 氏(福岡)

宴の幕開けは「おひれをどうぞ」から

宴の始まりは、卓袱料理ならではの「おひれ(尾鰭)をどうぞ」から始まります。
この言葉には「あなた様一人のために、高級魚である鯛を丸ごと一尾使っておもてなしいたします」という歓迎の気持ちと、「空腹の胃に、いきなりお酒を入れないように」という身体をいたわる優しさが込められています。

最初に供されたのは、長崎県産ヒラスのお吸い物。
福山シェフ特製の柑橘「はるか」のオイルが添えられ、爽やかな香りが静かに広がります。これから始まる特別な時間を予感させる、印象的な一椀でした。

長崎の山海の幸が、ひと皿の芸術になるまで

カラスミ 白子 黒豆鮑 椎茸 あおさつぼみ菜 苺 クレソン諫美豚 紅天神 ブロッコリー雲仙赤牛 菜の花 マスタード鯨 にこまる 筍

提供された料理は全10皿。
長崎の山海の幸が、卓袱料理とフレンチ、それぞれの技法によって丁寧に仕立てられました。

料理には、実際に両氏が県内の生産者を訪ね、現地で受けたインスピレーションが数多く反映されています。
なかでも印象的だったのが、長崎県産黒鮪に、雲仙市「ミヤタファーム」のビーツ、高島トマトを合わせた一皿です。オーブンでじっくり焼き上げられたビーツは、トウモロコシのような深い甘みと、ねっとりとした食感が際立つ仕上がりに。

生産者である宮田様からは「今日は我が子がお嫁に行ったような、こんなに綺麗にお化粧してもらって、感無量です」という言葉がこぼれました。

トップシェフの感性が、生産者の手塩にかけた素材の持つ力を最大限に引き出し、その魅力が来場者にまっすぐ伝わる、美しい瞬間でした。

料理に寄り添う、長崎のお酒とお茶

料理に合わせる飲み物も、すべて長崎県産。
五島ワイナリーのワイン、平戸の福田酒造が手がける日本酒「福海」、日本茶専門店「朱夏」が丁寧に淹れる東彼杵の「そのぎ茶」などが、料理の味わいにさらなる奥行きと余韻をもたらしました。

「守る」だけでは終わらせない。シェフたちの挑戦

「長崎を、ほどく。そして、編み直す。」
山本氏が守り続けてきた料亭文化と、福山シェフの自由で柔軟な発想が交錯することで、「伝統はこうあるべき」という固定観念から解き放たれた、新しい食の表現が生まれました。

 

山本氏は、次のように語ります。
「守るべき部分は守りつつ、これまで外からの文化を受け入れ独自の文化として発展・成長させてきた長崎ならではの文化を繋げていくための挑戦。」

来場者からは、次のような声が寄せられました。

「卓袱は変わらないから素晴らしい、という考えが覆されました。建物、器、食材、伝統を活かした新しい料理、そのすべてが新鮮で、目でも舌でも楽しめました。」

「卓袱×フレンチ、かなり新しい視点で楽しむことができ、ここでこう来るのか~と新しさに驚くこともありました。また一力さんというのが、特別な体験になりました。」

「おひれで食べたヒラスが美味しすぎて忘れられません。汁物で食べるとより風味が豊かになって、新しい発見でした。」

 

食は、文化であり、未来へのメッセージ

2日間限定の特別なレストランイベントでしたが、そこで交わされた視点や感性は確かに未来へとつながっています。
伝統を守ること、そして恐れずに変えていくこと。
その両方を選び続けてきた長崎だからこそ、生まれる食のかたちがあります。
WAKARAN Food Session は、その可能性を静かに、力強く示してくれました。
長崎の美食は、これからも人と土地の想いを編みながら、新しい物語を紡いでいきます。

 

交差する感性が、長崎の食を更新する WAKARAN Food Session

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