小さな壱岐の島で、海風を受けて育った
アスパラガスをぜひ食べてほしい
JA壱岐市アスパラガス部会 部会長
平野 泰史
2026.3.27
島の恵みの風を、みずみずしい一本に込めて

玄界灘に浮かぶ島・壱岐。穏やかな気候と、ミネラルたっぷりの海風が吹き抜けるこの島の特産品といえば、アスパラガスです。全国トップクラスの産地である長崎県の中でも、19年連続反収(※)1位という偉業を成し遂げている壱岐。車で端から端まで走っても30分ほどのコンパクトな島、そして生産農家はわずか70名弱という限られた条件下で、質・量ともに優れたアスパラガスを育てる技術の秘密に迫りました。
※1反(約10アール)あたりの農作物の収穫量
土の中から始まる、壱岐の春

3月初旬。取材日はあたたかな雨が降る春らしい天気でした。ビニールハウスの重い扉を開けると、そこにはムンムンとした熱気とともに、まっすぐ天に向かって伸びるアスパラガスがありました。タケノコのように地面をやぶって出てくる姿は、春のエネルギーに満ちています。2月上旬から覆いをかけたハウスの中で、着々と養分を蓄えてきたアスパラガスが、収穫の最盛期を迎えようとしていました。
前日と比べて、この日の収穫量は多いのだとか。「最盛期になると、朝とっても夕方にはまた出てくるんですよ」と話すのは、アスパラガス農家の平野泰史(やすふみ)さんです。収穫サイクルは、朝7時から10時までと、夕方15時以降の2回。夏場になると10cmほど伸びることもあるのだそうです。「気圧の影響か、台風が来ると一気に芽が出ることもあるんです」。これから半年間、アスパラガスの成長を追いかける収穫の日々が続きます。

アスパラガスのハウスがこういう風景だと知って驚く方も多いのでは。私たちが食べるのは、地上に出た新芽の部分ですが、その本体は地下にあります。無数の新芽の土台となる地下茎(ちかけい)と、栄養を蓄える太い貯蔵根が地下に眠っているのです。「最初に植えるのは10cmくらいの苗で」と手を広げる平野さん。その小さな苗を、たくさんの収量を支える立派な地下茎と貯蔵根に育てるため、植え付けから1年間は収穫を我慢しなければならないのだそう。土の中で蓄えたエネルギーが、緑の新芽となって、2年目の春、土をやぶって出てくるまでの待ち遠しい日々です。
島内循環と海風の恵み、この島の技術によって

では、反収県下一の秘密はどこにあるのでしょうか。アスパラガスを覆うのは、見るからに柔らかくふかふかした黒っぽい土。ちょうど堆肥を入れたばかりだと言います。堆肥に使用するのは、壱岐牛の牛ふん。島内の畜産農家の方と連携した堆肥をまくことによって、地下茎と貯蔵根が育ちやすいスポンジ状の土になり、アスパラガス栽培に欠かせない水はけの良さも叶えられると言います。
また、島ならではの海風も大きく影響すると話す平野さん。塩分やミネラルをたっぷり含んだ潮風がハウスに吹き込むことで、旨みや甘みの優れたアスパラガスになり、湿気のこもりやすい夏場は、強い海風によりハウスの風通しがよくなることで、病気のリスクを減らす効果もあるのだそうです。

島内のアスパラガス農家の方々の結束力も、反収アップの理由のひとつです。15年ほど前に島にUターンし、兼業農家だったご両親の畑を活用し、新規就農した平野さん。その際も、先輩農家の方から、防除や堆肥のやり方などアスパラガス栽培の基本となる知識を教えてもらったのだそう。今でも、定期的に開かれる講習会やテクノロジーの活用における情報共有などを通して、島全体でアスパラガスの質と量を保つための試みが行われています。「反収県下一位が来年、20年連続になったら部会でお祝いをしようと話しているんです」と話す平野さん。仲間同士の絆も、この島のアスパラガスに欠かせないひとつです。

この日の朝は、20アールほどある畑全体で30キロの収穫がありました。あらためて「どうしてこんなにたくさんとれるのですか」と尋ねると、「アスパラに寄り添って、やるべきことを淡々とやっているだけ」と笑顔が返ってきました。収穫したアスパラガスは、3日ほどで全国の消費者の手元に届きます。「小さな島で、潮風を浴びて青く育った島アスパラをぜひ食べてほしいです」。その言葉には、この島ならではの味にかける思いがこめられていました。
アスパラガスをおいしく食べる方法





①根元の固い部分は落とすか、ピーラーで皮を剥きます。
②7〜8cm幅に切り、適量の塩を入れた熱湯でゆでればできあがり!



平野さんは、ベーシックなマヨネーズや、ゆずポン酢、ごまドレッシングなど、その日の気分で味を変え、食べることが多いそう。そのほか、キャベツやブロッコリー、豚肉とともに、焼き肉のタレや塩コショウなどお気に入りの調味料で炒める食べ方や、天ぷら、BBQの直火やストーブの上にアルミホイルを引き、焦げ目がつくまで焼くのもオススメです。「もっとおいしい食べ方があれば逆に教えてください」とも話してくれました。壱岐のアスパラガスを、ぜひいろいろな食べ方で楽しんでみてください。
壱岐のアスパラガスが買える場所

・アグリプラザ四季彩館
・スーパーバリューイチヤマ