なぜこの食材を使うか」を明確にし、産地のストーリーごと食べ手に伝える。
ヘイフンテラス(ザ・ペニンシュラ東京内)
料理長
大崎 竜
2023.10.31
バラエティに富んだ長崎の食材と、みかわち焼きのコラボレーション
今回紹介した料理は、山のアワビと言われる椎茸と、海のアワビを使ってアレンジ。そこに、「五島の醤」のまろやかな旨味と、「五島つばき茶」の爽やかな香りを添え、深みのある味わいに仕立てました。料理をさらに引き立ててくれるのが、「みかわち焼き」の器。透明感のある白が美しく、中国料理にもしっくりとなじむデザインで、食材の魅力をより力強く伝えてくれます。
生命力に溢れた、滋味深い原木椎茸に魚醤の旨味と、茶葉の風味を加える
対馬産の原木椎茸は、香りが濃く、肉厚で歯ごたえがあり、しっかりとした旨味があるのが特徴です。約1年半もかけて自然の中で育っているから、菌床椎茸とは生命力が違うのでしょうね。実は、生で食べられる期間は短いので、今回の料理では旬ならではのフレッシュな味わいと香りを活かすため、油で炒めず軽く素焼きにしています。また調味に用いた「五島の醤」は、一般的な魚醤に比べて香りがまろやかでコクがあり、米麹由来の自然な甘みを加えることができます。上品な香りの「五島つばき茶」は煮出したお茶だけでなく、残った茶葉も乾燥させて仕上げにふりかけ、余すところなく使用しています。
山海の食材に恵まれ、一年中、良質な素材が手に入る
私は横浜出身ですが、長崎に3年ほど住んでいたこともあり、現地の食材については以前から身近に感じていました。生産者さんとも長くお付き合いさせていただくなかでとくに魅力だと感じているのは、海と陸、両方の食材に恵まれているということ。長崎は南北に長く、離島がたくさんあるという地形の特性上、季節ごとに様々な山の恵みが収穫でき、また魚の種類も日本一と言われるほどです。また牛肉も、長崎和牛とひとくくりになっていますが、島原和牛や壱岐牛、五島牛など様々な種類があり、肉質もいい。とりわけ対馬は食材の豊富さに加え、国境の地にあり異国文化が根付いてきた歴史もあって、中国料理との親和性も非常に高いと感じています。